SNSで話題!「ショートケーキ缶」仕掛け人が経営するリゾット専門店で、創業初期から人気の「メープル紅茶のクレームブリュレ」

札幌に拠点を構える株式会社GAKUの橋本さん

「24時間スイーツが売れたら面白い」

− SNSでも大変話題になっている「ショートケーキ缶」も、「面白そう」という発想だったのでしょうか?

そうですね。「24時間売れたら面白いだろうな」と思ったことがきっかけです。飲みに行った帰りに、家族にお土産を買いたいなと思っても「これを買って帰りたい」と自分が思えるものがないことに気づきました。

コンビニスイーツもどんどん進化していますが、選択肢がコンビニスイーツ一択ではなくなったらいいなと思って。きっと僕の他にもそういう人はいるんじゃないかなと思ったんです。ケーキだと持ち運びに気を遣いますが、パッケージが缶詰なので、かばんにそのまま入れられて便利です。

ショートケーキ缶

▲ 「ショートケーキ缶」の他にも「メロンショートケーキ缶」や「ふわ缶」などラインアップも季節によって変わる

− 最初は札幌の自動販売機ではなく、「Risotteria.GAKU 渋谷」で先行発売をしたのだとか。

「Risotteria.GAKU 渋谷」が「OKASHI GAKU」より先にオープンしたこともあって、お客さんの反応を見るために1〜2カ月、渋谷で先行発売をしていました。せっかちなのでどんどん物事を先に進めたいんですよね。

− 開発にあたって、大変だったことは何でしたか?

細かい作業が苦手なので、食品成分表を作るところですかね(笑)一番は、自動販売機で販売するので、落下した時の衝撃に耐えられるような方法です。

裏話をすると、実は僕はホイップクリームがあまり得意ではなくて、ショートケーキも苦手でした。そんな自分でも食べられる味わいに仕上げているので、生クリームがあまり得意ではない方にぜひ食べてみてもらいたいです。

オカシガクの前にある自動販売機

▲ 「OKASHI GAKU」の前にある自動販売機で、24時間いつでもパティシエの手作りスイーツを買うことができる

− ちなみに、プリン缶を発売したとのことですが、クレームブリュレは缶詰にすることは難しいのでしょうか…?

残念ながら…。時間が経つとカラメルのパリパリ感がなくなってしまうのと、カラメルが衝撃に耐えられず割れてしまうと思うので難しいですね。ぜひ、食べにお越しいただけたらと思います(笑)

「メープル紅茶のクレームブリュレ」が生まれたきっかけは、友人のカナダ土産

− クレームブリュレは、いつ頃から提供されていらっしゃるのでしょうか?

オープン当初は「プリン」「ティラミス」「ジェラート」「生チョコ」の4種類でした。確か、半年か1年経ったぐらいで「メープル紅茶のクレームブリュレ 」をメニューに加えましたね。

− スタンダードなクレームブリュレではなく、アレンジした「メープル紅茶」味を作ったのはなぜですか?カナダ産のメープルティーを使っている理由も気になります。

友人がカナダに行ったお土産に「メープルティー」を買ってきてくれたんです。最初はアールグレイで作っていたのですが、メープルティーを使ったクレームブリュレってあまり聞いたことないな、と思って。試してみると、香りと甘さがとてもマッチして、凄く美味しかったんです。

友人がお土産で「メープルティー」を買ってきてくれていなかったら、今もアールグレイのクレームブリュレだったかもしれませんね(笑)

− 確かに!学さんの思い出の詰まった「メープル紅茶のクレームブリュレ」の特徴やこだわりを教えてください。

味はベーシックで、卵黄を多めにした濃厚な味わいです。アパレイユがトロトロなクレームブリュレもあると思うけれど、僕としてはアパレイユとカラメルの硬さのと対比が大きいと、ミスマッチになるのではと思っていて…。こだわりは、ちょうど良い硬さのカラメルに硬めのアパレイユを合わせることで生まれる口溶け感。あえて茶葉をこさないのは、茶葉の香りを感じてほしいなと思っているからです。

あえて茶葉をこさないのは、茶葉の香りを感じてほしい

− お客さんからの反応はいかがですか?

リピートしてくださる常連さんも多く、人気スイーツのひとつです。ご家族でいらしていて、お連れ様が注文したクレームブリュレを一口食べて、追加でもうひとつご注文をいただいたことも。

自分も相手も幸せになるものづくり

− 夜パフェも食べましたが、他のお店では見たことがないような独創的な見た目が美しく、どれもとても美味しかったです。見た目の美しさと美味しさの両立については、いつもどのように考えていらっしゃいますか?

最初は見た目よりも味重視だったんです。でも、「インスタ映え」という言葉も流行り始めて、見た目にもこだわり始めると、お客さんの反応が想像以上に面白くて。お客さんをもっとワクワクさせたい!という気持ちがエスカレートして現在に至ります(笑)

− お客さんの反応は、どのように見ていらっしゃるのですか?

昔から全店舗にアンケートを置いています。お客様から「改善してほしい」というご意見も含め、毎月必ずチェックしていますね。今だとInstagramやTwitterなど、SNSでリアルな反応を見て、意見を取り入れています。

現場の声もとても大切にしてきました。スタッフに試作品を食べてもらい、味のバランスや見た目について意見を出し合い、より良いものをお客様にお出しできるように日々試行錯誤しています。

リゾットを食べた後に、僕自身が美味しいスイーツを食べたいと思って作っています。ですので、リゾットを食べた後だけではなく、スイーツだけ食べにお越しいただくことも大歓迎です。

自分の感覚を大切に

経営者には様々なタイプがいます。ニーズを先読みしたり、流行を敏感に察知して新商品を考える人もいれば、橋本さんのように自分の感覚を大切にされている方もいます。

自分が食べたいものをつくる。面白そうだからやる。でも、お客さんも喜んでくれているか、満足してくれているかをちゃんと確かめる。人々に愛される人気店を生み出し続ける秘訣は、橋本さんの「気づく力」をはじめとした鋭い感覚だけではなく、それをしっかりと「確かめる力」とセットなのかもしれません。

人に感想を聞くことは、勇気が必要です。橋本さんは自分の感覚と培ってきた努力を信じながらも、それと同じくらい、自分を過信しないようにしていました。だからこそ、自分も相手も幸せになるものをつくり続けられるのだと思います。

そんな橋本さんの「新しい仕掛け」に、これからも目が離せません。ぜひ、こだわりが詰まったGAKUワールドをお楽しみください。

メープル紅茶のクレームブリュレ
リゾッテリアガクビス

ABOUT US

江川 南
RESUPPORT 代表 / デザイナー 「地元のカルチャーを守り、生み出す」をテーマに、生まれ育った札幌で活動するフリーランス デザイナー/コーディネーター。札幌や北海道のカルチャーを支えている中小企業の会社案内やフライヤーをはじめ、WEBサイトなどのブランディングデザインに携わる。おいしいものを食べることが大好き。趣味は旅先でお茶を買うこと。漫画と雑誌を読んでいる時間が至福の時。旅、音楽、ファッション、映画、本、建築、まちづくり、スタートアップなどが関心分野。