原材料の違いでクレームブリュレの風味や美味しさは変わるのか…?素朴な疑問からスタートした本企画。手始めとしてクレームブリュレを構成する牛乳にロックオンし、特色のある3種の牛乳で作り比べ・食べ比べしました。今宵、自他共に認める「ミルクラバー」と現役パティシエ、当サイト編集長が疑問を検証。クレームブリュレづくりに推したい牛乳を決定します。
クレームブリュレの美味しさの決め手になるのは、原材料?
さまざまなお店を訪問し、クレームブリュレを食べ比べてきた我らブリュレマニアチーム。同じクレームブリュレでも、キャラメリゼの度合いやアパレイユの硬さなど個性は千差万別であることを体感してきました。
食べ歩きを続ける中で浮かんだ疑問が一つ。
原材料の違いで、美味しさや風味はどのくらい変わるのか。
クレームブリュレを構成するのは、アパレイユの原材料として卵、生クリーム、牛乳、砂糖、バニラエッセンス。カラメルには砂糖(カソナード)を使います。これらの中でもブリュレの美味しさや風味を特徴づけるのは、卵や生クリームだと言われています。
シンプルだからこそ、素材自身の品質や特徴が反映されるのでは?という仮説の下、実際にそれがどれだけの違いとなって表れるのか。ブリュレ“マニアらしく”、マニアックかつ斜め上から検証していこうというのが本企画です。
注目したのは卵でも生クリームでもなく、あえての牛乳。
それは、なぜか?実は牛乳って非常にバラエティ豊かな食材だからです。
「日本国内に約2000種類。全国規模で流通している大手乳業メーカーの牛乳だけでなく、その地域でしか飲むことのできない“ご当地牛乳”や、牧場で製造している牛乳があります。さらに、低脂肪牛乳や無脂肪牛乳など成分の異なる牛乳も。殺菌温度や時間、加工処理方法、はたまた牛の食べている餌の違いや季節によっても絶妙に風味が変化するユニークさを持っているのが牛乳です」
と教えてくれたのは、ミルクマイスター高砂さん。牛乳が大好きすぎるがゆえに、牛乳のおいしさを広めるべく精力的に活動しているデザイナーさんです。これまでに飲んだ牛乳の数は、なんと400種類にも及ぶそう!
検証をお手伝いいただくのは、高砂さんをはじめ牛乳をこよなく愛する「ミルクラバー」のお仲間・亀山鶴子さん。さらに、当サイトのレシピ動画【パティシエ直伝おうちで簡単!本格クレームブリュレ】に出演いただいたパティシエの関根夏子さん、ブリュレの食べ比べ数なら日本一かもしれない近藤編集長にも加わってもらいました。
▲ 左から関根さん、高砂さん、亀山さん、近藤編集長
選ばれし精鋭たち。個性の異なる3種の牛乳
数ある牛乳の中から高砂さんに選んでいただいた牛乳は3種。小岩井乳業(株)の【小岩井無脂肪牛乳】、ノースプレインファーム(株)のおこっぺ有機牛乳、山本牧場の養老牛放牧牛乳。スーパーで販売されているものやECサイトで購入でき、比較的手に入りやすい商品たちです。
▲ 左から養老牛放牧牛乳、小岩井無脂肪牛乳、おこっぺ有機牛乳
− 今回の牛乳は、どんな基準で選ばれたんですか?
ミルクマイスター高砂(以下、高):今回は、あくまで「牛乳」の中から個性のあるものを選びました。
− あくまで牛乳というのは…??
高:「牛乳」は生乳でしか作ってはいけないというルールがあります。例えば「無脂肪乳」や「乳飲料」のように「牛乳」と記載されていない商品は、生乳(牛から搾っただけの状態のもの)にクリームや脱脂粉乳などの乳製品を加えたり、牛乳の成分以外の原材料を加えて作った飲み物です。パッケージの裏の表記を見てみると、違いが分かりますよ。
− ということは、今回用意した「無脂肪牛乳」と「無脂肪乳」とは似て非なるものなんですね?
高:その通りです。無脂肪牛乳は【乳脂肪分0.5%未満、無脂乳固形分8.0%以上】と決められていて、原材料は生乳100%使用。無脂肪乳は、生乳と生乳以外の乳製品を原材料として使った「加工乳」に分類されます。
− なるほど…。この違いを知らない方も多いかもしれません。では、3種の「牛乳」の特徴を教えてください。
高:クレームブリュレを作る際に違いが分かりやすいであろう脂肪分の違いを中心に、牛の飼い方や食べる餌の違いなどに特徴のある牛乳を集めました。
- 養老牛放牧牛乳(緑ラベル)
乳脂肪分3.4%。低温保持殺菌。北海道中標津町にある牧場。一年中放牧して育てた牛から搾った生乳を使用した、ノンホモジナイズド牛乳。個性が強く、味にパンチが。季節によって脂肪分が変わり、夏の緑ラベル、冬の赤ラベルの2種類がある。
- 小岩井無脂肪牛乳
乳脂肪分0.1%。超高温瞬間殺菌。ヘルシー嗜好の方にオススメ。食事の時に合わせやすいタイプで、スーパーなどで購入可能。
- おこっぺ有機牛乳
乳脂肪分3.5%。低温保持殺菌。北海道興部町にある牧場。放牧飼養と有機栽培した牧草を食べた牛から搾った生乳を使用。ノンホモジナイズドの牛乳で、旨みや奥深さを味わえる。季節によって脂肪分が変わり、風味に変化が感じられる。
− ノンホモジナイズとは、なんですか?
高:「生乳中の脂肪球を均質化(ホモジナイズ)処理していない」という意味です。多くの牛乳はホモジナイズされたものが一般的で、脂肪を小さく均一化するため味わいも均一になります。一方で、均質化していないノンホモジナイズの牛乳は、脂肪球が表面に浮いてクリーム層をつくります。生乳に近い風味が感じられるのが特徴ですね。
− 確かにノンホモ牛乳はフタにクリームがついています。牛乳の表面を見ると黄色の粒状のものが浮かんでいますが、これも脂肪ですか?
高:はい。品質には問題ないのですが、もし気になる方はビンを振ってから飲むのがおすすめです。振り続けると、バターになってしまうので気をつけてください(笑)
【ミルクマイスター高砂さん】
飲んだ牛乳は400種類以上!アート・デザイン・イベントなどさまざまなアプローチで牛乳の魅力を発信する世界一牛乳好きなグラフィックデザイナー。
MILK MEISTER TAKASAGO
【亀山 鶴子さん】
大分県出身のミルクラバー。本職はイラストレーター。毎日飲むほど牛乳が大好きで、架空の牛乳パックのデザインをしちゃうほどミルクへの愛は広く深い!!
かめつる
【関根 夏子さん】
神奈川県出身。ウェディングケーキのパイオニアである南青山『アニバーサリー』で20年間勤務し、取締役に就任。ウェディングケーキ・シュガークラフトの技術はもちろんの事、商品開発や外部新店舗立上げ、お菓子教室講師など多岐にわたりお菓子の仕事に携わる。現在は、シェフをしながら商品開発や新店舗立上などお客様に寄り添うスイーツコンサルタントとして活動。
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【ブリュレマニア編集長 近藤】
クレームブリュレが好きで、食べ歩きしている。カラメルは硬め、ブリュレ本体はトロっとしてる派。カラメルをスプーンで叩く瞬間が好き。最近、クレームブリュレ好きが高じて、クレームブリュレ専門ブランドを立ち上げた。
CREME BRULEE.jp